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そんなこんなで俺達の前にはイカみたいな怪人が立ちはだかっている。
ブルーが行きたくないとかほざいて直帰しようとしたり、イエローが「愚民どもめ!」とか言いながらビルを破壊していたのは五分前までのことだ。
地味に強いグリーンが雑魚を蹴散らしている間に、怪人は気だるそうにやって来た。
「帰りたい」
そうして頂くと俺達としても助かるよね。うん。
「帰りたいっつってんだろォォオ!!!」
何故ここでキレる。
帰れし。
短気な奴なのだろう。言うなり突進してきた。
あのイカの頭の尖った部分をこちらに向け、結構なスピードでダッシュしてくる。
あれが腹部にクリティカルヒットしたらなかなかに痛いだろう。抉れそうだ。
イカの怪人は、一番近くにいたイエローに向かって行った。
イエローは避ける様子もなく、冷ややかな目でイカの動向を見守った。
どこん。
「…………」
「…………」
そこに痛みにのたうち回るイエローの姿はなく、その場に佇んでいるだけだ。
その腹に、頭を埋める怪人はいたけれど。
………なんか痛そうとか思ったけど全然痛くなさそう。抉れてない。
ぼこん。
とイエローが右の拳を真っ直ぐ降り下ろし、イカはそこに蹲った。こっちの方が痛そう。
しばらく見ていると、怪人はむくりと起き上がり、
「これで終わったと思うなよ」
と言い残してアジトに帰った。
なんかゼロ郷みたい。
ビルが崩れ、人々が避難しつくした街の中にぽつねんと取り残されてしまった。
ずっと黙りを決め込んでいたブルーが、不意に口にした。
「僕達が駆け付ける必要はあったんですかね」
俺が知りたい。
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