12人が本棚に入れています
本棚に追加
「ま、まあ、怪我人もいないし!やっつけたし!万事めでたしめでたしってことで!ねっ」
少し気まずそうに、しかし殊更に明るい声で、桜庭さんは締め括った。
「ほら、カメラマンさんが来てるよ!ちゃっちゃとポーズとって帰ろ!」
桜庭さん本当にあなたって女神は。
この微妙の極みみたいな空気を打破しようとするその心遣い。
素晴らしい。
流石は俺のジャスティス。
ただ、カメラマンとか言わないで。
全然世界観が安定しない。
「はい、バター!」
ぱちり。
うむ。なかなかいい。
かっこよくキマってる。特に俺が。
このご時世、仮面のバイク乗りに負けない為にも主婦層のハートを掴んでおくのも非常に大事。
「じゃ、僕はこれで」
ポーズを崩し、更に踵を返しながらブルーが言った。
その格好のまま帰んのかよ、と思ったら、その格好のまま帰るみたいだ。
ある意味勇者じゃねぇか。
イエローは首を回してゴキゴキいわせている。疲れた、みたいな顔してるけどほとんど何もしてないだろお前。
俺もだけど。
まあ、俺も帰るとするか、と一息ついたとき、控えめな声が掛かった。
「あの……赤坂くん」
ほんのり頬を桜色に染め、伏せた睫毛を震わせた桜庭さんは非常に可憐で、変な声で返事をしてしまった。
「さっきの、続き、は………?」
どきどきした。
柄にもなく、どきどきした。
「あ……えっと……」
かつん。
言葉を紡ごうとした俺の足元に、小さな小石が転がった。
否、この石、降って――――……
「………あ?」
ぐらりと。
半壊したビルが、更に崩れ行く様が見えた。
降り注ぐ瓦礫。
その真下に居るのは――――………
スローモーションで、世界が動いた。
最初のコメントを投稿しよう!