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ベッタベタの、使い古されて古典的ともいえる、恋愛漫画の王道。
ヒロインがピンチ←イケメンが助ける
今まさにその状況が、桜庭さんと俺を主役にして再現されようとしていた。
王道とか、かっこよく助けたいとか、そんなことどうだっていい。
「伏せろ!!!」
止まっていた時が動き出したように、一瞬で俺達は瓦礫と砂埃の下敷きになっていた。
「………うー………」
がら、と瓦礫を自分の上から無理矢理退かす。
大きな塊ではなく、細かく砕けたコンクリートが降ってきたのは幸いだった。
俺の隣では、桜庭さんが俺の指示通りに伏せた体制を貫いていた。
困惑と恐怖の混じった瞳が揺れている。
ダサいヘルメット越しにでもそれが分かる。
「あ、たし……」
怪我はないようだ。
本当によかった。
「赤坂くん………っ!?」
「俺も、だいじょぶ」
がぱ、と桜庭さんがピンク色のヘルメットを外す。
表れた顔は哀しそうで、瞳には涙が溜まっている。
そんな顔を、させたかった訳ではないのに。
彼女がどう思っていたとしても、作られた笑顔だったとしても。
思うままの表情を晒していてほしいと思うのに。
「ほんとに………?」
ああ、俺は大丈夫です。
だから、そんな顔をしないでください。
大丈夫なんです。
だから、
「……わらって、ください」
桜庭さんの大きな目が、更に大きくなった。
「、大丈夫、だから………
あなたと、映画に行きたいから………
だから、平気です」
大きな目をすうっと細めて、桜庭さんは笑顔になった。
蒼白だった頬に、ようやく色がついて、俺は思う。
やっぱりあなたは、女神です。桜庭さん。
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