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「とにかく事実を見極めない事には…」
メインディッシュにはナイフも付けず浮絵はただ自分事のように眉間に皺を寄せワカメへの今後の対策を考えていた。
「僕もまだ信じられないんです…あのワカメがそんな事するなんて。僕がもっとしっかり見といてやればって後悔ばかり、兄貴としてお前は一体何して来たんだって…」
「そんなに自分を責めないでカツオ君。」
浮絵は口を真一文字に締めじっとテーブルに飾られた花を見ていた。
「分かったわ!一度ワカメちゃんと2人でゆっくり話してみるね、ワカメちゃんがその男性の事を本気で好きならその理由もきちんと知りたいし。」
「あ、ありがとうございます浮絵さん、こんな経験からっきしないから僕…」
「あら?誰だってそうそう経験あるもんじゃないよこんな事!」
ですよね~とカツオは頭を掻いた。
「兄貴も大変だね。」
「あ、は、はい…」
「でもワカメちゃんもこんなに想ってもらえる兄がいて幸せだ。」
浮絵は冷めちゃうから食べよ!とナイフとフォークを持つと鴨のローストに刃を入れた。
カツオはナイフを持ちながらキャンドルにぼんやりと浮かび上がる伊佐坂浮絵のいつまでも変わらない聡明な美しさに暫く見とれていた。
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