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カツオは心痛な気持ちのままアパートの鍵を開き中に入った…
(浮絵さん…怒っただろうな、そうだよな…あんな言われ方したら誰だって。)
良かれと感じた事がつい裏目に出てしまう…カツオは己れの情けなさとデリカシーの無さにほとほと呆れ返っていた。
(けどあぁやって喧嘩してもやっぱり好きなんだな…)
カツオはヤカンを火にかけながら浮絵が交差点でやり取りしていた男性の影をまた思い返していた。
(どうしようもないロクデナシなんだ…ふふッ、まるで僕みたい。)
カツオは携帯を投げ捨てるように置くとやる瀬ないため息をついた。
ピピピ…♪
カツオの携帯が鳴った。
「もしもし…」
《カツオ君?さっきはゴメン…取り乱して。》
電話は浮絵からだった。
「い、いや悪いのは僕のほうで…何かデリカシーのカケラもないどうしようもない男ですみません、アハハ。」
カツオは誰もいない部屋で一人頭を掻いた。
《あのねカツオ君…私どうしても言っておきたい事があって。》
「あ、はい…何ですか?」
《………》
浮絵の言葉が一瞬止まったと同時にカツオの携帯の充電が途切れる警告音が鳴った。
(まずい、充電器充電器ッ!)
《カツオ君聞いてる?》
「あ、はい聞いてますッ!」
カツオは浮絵の声に耳を傾けながら充電器を探した。
《私ね…》
ピィィィ……
(………タハ…。)
充電器が間に合わずカツオの電話の電源が落ちた。
「クッ、ど、どうしよッ、ワカメのヤツこないだの掃除でどこかにやったんだッ!」
カツオは家中探し回ったが結局充電器は見つからず慌てて公衆電話に駆け寄ったが浮絵の携帯番号を記憶していなかった。
(ハァ~…ダメダメだぁ~僕は…)
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