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翌日カツオが職安から帰って来るとアパートの前にまたワカメの姿があった。
「あ、甚六さんから聞いたんだ、浮絵さん今カナダなんだって。だからいくら頑張っても連絡の取りようがない、ワカメに余計な事頼んで悪かったな…」
「……」
ワカメは何を言ってんのと言いたげな顔で黙ってカツオを見た。
「なッ、何だよッ、その事でわざわざ来てくれたんじゃないのかよ?」
「…まさかとは思うんだけど…ま、いっか!」
ワカメは一人納得したようにカツオの前から消えようとした。
「!ッ、おいおいワカメッ、何がまさかなんだよッ!」
「いいの…お兄ちゃんに言っても仕方ない事だし…」
ワカメの言い草が妙に耳についたカツオはワカメの後を追い階段を駆け降りた。
「ちょっと待てよワカメッ!」
カツオはワカメに駆け寄るとワカメの肩をグイッと掴むと自分の方に身体を振り向かせた。
「何がまさかなんだよッ、気になるだろ言えよ!」
「やよ…!」
「言えってばッ!」
カツオはワカメの肩を思い切り掴んだ!痛いよッというワカメの声にカツオはその掴んだ手を離した。
ワカメはフゥ~と息を吐くとやる瀬ないため息の後に言葉を続けた。
「お兄ちゃん浮絵さんに何か言った?」
「何かって…まぁ確かに不愉快な想いは少しさせちゃったけど…けど浮絵さん電話ですぐ…」
ワカメは目をぐるりと回しまたため息をついた。
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