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《おかけになった電話番号は現在電波の届かない場所にあるか電源が…》
「クソッ、電話くらい出ろよッ!」
翌日カツオは頻繁にワカメに電話を入れたが応答はなかった。
(チェッ!くだらないワカメの戯言のせいで結局一睡も出来なかったじゃないかよッ!)
怒りの矛先をワカメに向けながらカツオは職安には出向かず一日アパートの部屋に篭っていた。
(だいたい浮絵さんが僕を好きになる訳がないんだよッ、浮絵さんをそんな恋愛対象で見た事僕だって今まで一度もなかったし…)
カツオはパンの耳をかじるとゴロンと大の字に寝そべった。
(ハァ~…カナダから帰って来た浮絵さんとどんな顔して逢えばいいんだよッ、ほんとワカメの奴口から出任せをぺらぺらと!)
確かに伊佐坂浮絵という女性は小さな頃からカツオの憧れの存在ではあった…
しかしあくまでもそれは単なる憧れの女性像としての存在であり浮絵さん自身とどうこうなろうだなんてカツオの中には微塵も考えが及ばなかった。
(………)
カツオはふと考えた、けどもしワカメの言っている通り浮絵さんが自分に好意を持ってるとしたら…
いやいややはりどう考えたって有り得ない事だ、カツオは何回も首を振り余計な想いを断ち切ろうと努めた。
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