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「今の職業が自分に合ってない、ただそれだけだよ…」
「ばッ、バッカじゃないのアンタッ、誰もかれも自分のやりたい事職業に出来たらそんな苦労はないってのッ、いい?殆どの人はそんな想いをグッと飲み込みみんな我慢してしたくもない仕事してんだよッ!30過ぎて何甘えた事言ってんのよッ!?」
サザエは呆れたァ~と視線を天井に向けた。
「…合わないってどういう風にだい?」
サザエに代わりフネがゆっくり口を開く。
「うんまぁ…何てゆぅか、ノルマを貸せられる機械的な仕事よりもっと人間同士の血の通った仕事ってゆぅか…」
「血の通うねぇ…そういう仕事がしたいんだ、カツオは?」
「僕にはそういうのが向いてるのかなって。」
フネはカツオの言葉を聞いた後、熱い緑茶の入った湯飲みを口に付けた。
「ふぅ…お父さんだってマス夫さんだってそりゃ今までやりたい事もあったでしょうよ、だけどね、この家を守る為に家族を支える為に…それだけを支えに我慢して一生懸命やって来てくれたから今の磯野家はあるんだよ?アンタそれ解ってる?」
サザエはさっきより優しい口調でカツオを叱咤した。
「解ってるよそんな事…」
「!てッ、解ってないッ、全然解ってないよアンタッ!働くって事がどういう事なのかって根本がねッ!」
サザエは椅子から立ち上がりまた興奮した。
「サザエ…落ち着きなさい…」
フネはまたサザエを宥めた。カツオはただ視線をコーヒーカップに落としたままだった。
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