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(この10年ていったい何だったんだ…)
暗い団地の片隅でカツオは一人肩を落としていた。カオリと2人で築き上げてきた10年間…その10年間の重みがまるで水素のようにふわふわと上辺だけの飾り物に感じた。
それもこれも全て自分のふがいなさから来ている事くらいカツオにも解ってはいた、解ってはいたがそれを何とか出来なかったのだろうか。
自分で自分が情けなくてもう腹すら立たなくなっていた。
何もかも自分の描いていた理想とは掛け離れた人生…こんなはずではなかった人生…カツオは唇を噛み締めながらその時ずっと我慢してきた初めて溢れ出す涙を許してやった…
(チキショ…カオリ…何でなんだよッ、話もせずにいきなり…僕って話し合いすらする価値のない男だったのかよ!)
カツオはただ泣いた…砂場で遊ぶ幼児達が不思議そうにカツオを眺めていた。
「おじさんどちたの?」
「あ…ズズ…な、何でもない…グズ…何でもないんだ。」
好奇心旺盛な幼児の一人がカツオを心配して目の前に立って声をかけてきた。
カツオはいずらくなりその場からとぼとぼと力無く立ち去った。
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