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「ただいまぁ~!」
仕事を終えたカツオはインタホンも押さず実家の玄関の扉を開いた。
「カツオ兄さんッ、久しぶり!」
玄関に勢いよくカツオの甥であるフグ田タラ夫が出迎えた。
「おぉタラ夫、暫く見ないうちにまたデカくなったんじゃない?大学はどう?」
「まぁ…別にまあまあ…」
タラ夫はヘッドフォンを肩にかけ適当に答えた。
「何だよそれッ、てゆーかいちいち実家に帰る度に僕の事出迎えてくれなくてもいいから、小学生の頃思い出しちゃうよ!」
タラ夫はそだねと笑うとまた自分の部屋に帰って行った。
「母さんッ、母さんいるの?」
靴下に穴が開いているのか歩く度に親指の底がひやこい。カツオが台所の扉を開くと腰が曲がったカツオの母、磯野フネがコンロの前で煮物を煮ていた。
「お帰り…お腹は?」
フネはカツオを見る事なく淡々と言葉をかけた。
「空いてる…姉さんは?」
「サザエならマス夫さんと近所のお通夜に出掛けたよ。」
そっかぁとネクタイを緩めるとカツオはドカッとダイニング椅子に腰掛けた。
「筑前煮食べるだろ?あと冷蔵庫に昨日のトンカツもあるけど…」
「筑前煮でいいや。」
カツオは蛍光灯を見上げフゥ~と息を吐いた。
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