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「母さん…帰るね。」
11時を過ぎてもワカメは帰って来る様子はなかった。カツオはワカメに一度連絡を寄越せとフネに伝言すると玄関で靴を履いた。
「お父さんの病院には行ってくれたのかい?」
「あぁ、明日か明後日仕事の暇見つけて行こうと思ってる。」
フネはそうかいと皺くちゃの顔を更に皺くちゃにした。
「カツオ…」
「ん?…」
「あんまりワカメの事を責めてやらんどくれ?」
「………」
フネの言葉にカツオは何と答えようか迷った。
「どうせまた…」
ガチャン…ッ!
カツオが言葉を発すると同時に目の前の玄関扉が開いた。
「ただい…ッ!お、お兄ちゃんッ!?」
カツオの妹、磯野ワカメは兄カツオがいた事に少し戸惑う表情を見せたがすぐに視線を母フネに送った。
「お帰り…ワカメ。」
「ただい…」
「こんな時間まで何してたんだ!」
ワカメの言葉をカツオが厳しく遮った!
「カツオッ!」
「お…お兄ちゃんには…関係ないじゃない…」
フネの目が責めてやるなと言っていたがカツオには我慢出来なかった。
「家の事手伝う約束じゃなかったのか?母さんの負担を減らすってお前…」
「………」
ワカメはただじっと下駄箱に視線を落としていた。
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