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寝苦しい夜だった。
むっとするような湿度が、安眠の妨げとなる。
こんな夜は、ろくな夢を見ない。
そう思いながら床に入る。
夢も見ずに、泥のように眠りたい。
心からそう願っていた。
そして、そう願えば願うほど、夢は悪い色に染まってしまう。
暗くて、狭くて、息苦しい長い、終わりのない洞窟。
そこを立ち止まることも出来ずに走り続ける。
足元も見えないので、何度もつんのめり、転がる。
疲れてくたくたになっても、座り込むことも出来ない。
何かが後ろを追いかけて来るから。
得体の知れない、何かが、息も荒げず単調な足取りで追いかけて来る。
怖い。
とても怖い。
捕まりたくない。
捕まればどうなるかなど想像もつかないがともかく恐ろしい。
闇の中で、それとの距離が縮まっていくのを感覚で捉える。
一歩、そして一歩。
ふいに肩をそっと撫でられる。
冷たい、氷のような手。
「あ、ああああああああああ・・・・・っ!!!!!!」
叫びながら、肩に乗った手を闇雲に振り払う。
手応えはない。
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