夜も眠れない(1)

2/9
37人が本棚に入れています
本棚に追加
/204ページ
寝苦しい夜だった。 むっとするような湿度が、安眠の妨げとなる。 こんな夜は、ろくな夢を見ない。 そう思いながら床に入る。 夢も見ずに、泥のように眠りたい。 心からそう願っていた。 そして、そう願えば願うほど、夢は悪い色に染まってしまう。 暗くて、狭くて、息苦しい長い、終わりのない洞窟。 そこを立ち止まることも出来ずに走り続ける。 足元も見えないので、何度もつんのめり、転がる。 疲れてくたくたになっても、座り込むことも出来ない。 何かが後ろを追いかけて来るから。 得体の知れない、何かが、息も荒げず単調な足取りで追いかけて来る。 怖い。 とても怖い。 捕まりたくない。 捕まればどうなるかなど想像もつかないがともかく恐ろしい。 闇の中で、それとの距離が縮まっていくのを感覚で捉える。 一歩、そして一歩。 ふいに肩をそっと撫でられる。 冷たい、氷のような手。 「あ、ああああああああああ・・・・・っ!!!!!!」 叫びながら、肩に乗った手を闇雲に振り払う。 手応えはない。
/204ページ

最初のコメントを投稿しよう!