夜も眠れない(1)

3/9
前へ
/204ページ
次へ
「痛っ!!」 その瞬間、混乱する頭を誰かが激しく殴打した。 火花が飛び散るような痛みを覚え、ぎゅっと閉じていた目を恐る恐る開いた。 眼前にあったのは見慣れた顔だった。 「るっせーぞ、陸也!ちっとは静かに目覚めろや」 黒い短い髪をツンツン立てらせた、不機嫌そうな男の顔。 陸也はやっと、夢を見ていた事に気付き、ここが何処なのかを思い出した。 ここは和泉のアパートだ。 この古くて、狭くて、罪になりそうなほど汚い部屋。 1DKの部屋に男が四人もごろ寝しては、悪夢のひとつも見るだろう。 陸也は汗で額に張り付いた前髪を掻きあげると、辺りを見回した。 六畳の部屋に所狭しと広がったコタツ布団。 もうそれだけで眩暈がするほど暑苦しい。 「暑い・・・、暑いんですよぅ、ここ ! 和泉さん扇風機も持ってないから、 僕、変な夢見ちゃったじゃないですかっ」 陸也は家主に責任の追及をした。
/204ページ

最初のコメントを投稿しよう!

37人が本棚に入れています
本棚に追加