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「痛っ!!」
その瞬間、混乱する頭を誰かが激しく殴打した。
火花が飛び散るような痛みを覚え、ぎゅっと閉じていた目を恐る恐る開いた。
眼前にあったのは見慣れた顔だった。
「るっせーぞ、陸也!ちっとは静かに目覚めろや」
黒い短い髪をツンツン立てらせた、不機嫌そうな男の顔。
陸也はやっと、夢を見ていた事に気付き、ここが何処なのかを思い出した。
ここは和泉のアパートだ。
この古くて、狭くて、罪になりそうなほど汚い部屋。
1DKの部屋に男が四人もごろ寝しては、悪夢のひとつも見るだろう。
陸也は汗で額に張り付いた前髪を掻きあげると、辺りを見回した。
六畳の部屋に所狭しと広がったコタツ布団。
もうそれだけで眩暈がするほど暑苦しい。
「暑い・・・、暑いんですよぅ、ここ ! 和泉さん扇風機も持ってないから、
僕、変な夢見ちゃったじゃないですかっ」
陸也は家主に責任の追及をした。
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