最後の日

21/24
前へ
/128ページ
次へ
藤田は合図を送って直ぐ、靴を履き終わり一足先に外へと出た。 俺もそれに続き半分まで履いていた靴を一気に履くと、外へと駆け出す。 「さぁ、行こうか」 玄関入口で待っていた藤田は、俺が来たと同時に歩き出した。その後を追い、俺は隣に並ぶ。 ・・・どうやら俺の感じ取れた異変は、胸騒ぎだけではなさそうだ。その理由として、何故だか、藤田と並んで歩くのはこれで最後になりそうな予感だ。直感だがそう思った。 「おい・・・ニノ・・・」 もし最後になるんなら俺は・・・。 「おい、ニノォ・・・」 俺はこいつと少しでも長く共に居たい。 ・・・そう思っている。 「おい、ニノォ!!!」 「はっ、ハイィィィ!!?」 「お前人の話聞いてんのかよ!」 ・・・うっかりしていた。 俺の癖だ。 一つの事を集中的に考えるとつい自分の世界に浸ってしまう。治そうとはしているのだが・・・。 「ったくよぉ、どうせまた縁起でもねぇ事考えてたんだろ」 「うっ・・・」 人に勘が鋭いとか言う前にお前も十分鋭いじゃないか! ・・・と言ってやりたい。 「俺は大丈夫だよ。 ダチとしてお前からは離れねえからな」 藤田は笑顔を作り、親指を立て、それらをこちらに向けた。 何だか安心する。 藤田の一言は時に俺を良い気分にさせてくれるものだ。
/128ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加