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「あっ!」
トイレから出た俺に梅村は慌てて走って来た。バケツは体育館の出入口に置いてある。
「梅村・・・」
「良かった。てっきり殺られたのかと・・・」
目に涙を溜めながら言う梅村。
バケツを持って来るのが少し遅い気がしたが、まぁ、それでも生きてるだけ良しとしよう。
「勝手に殺すな。それより他のやつらには逢わなかったのか?」
「う~ん・・・逢わなかった・・・かな?」
おいおい。何故曖昧且つ疑問形なのだろうか。
「逢わなかった"かな?"って何だよ」
「その・・・目の前を物凄い速さで何かが横切ったっていうか・・・。
紅い二筋の光が通ったの」
「ふむ・・・」
紅い光か。
「成る程。俺らが確認したのはまだ二種だけだからな。まだまだ知らないやつが存在しているはずだ・・・」
腕組みをしながら言う俺に対して、梅村はそうそう、と、何か思い出したかの様に付け足す。
「もし仮に二宮君の言ってる事が有ってるとすれば、見えない生物・・・不可視生物は不可視だけじゃないよ」
不可視生物・・・。きっとたった今梅村が決めたのだろう。意味合いとしては目に見えない、掻【か】い摘まんで言えば、不可視の生物という事だろう。
それより、どういう事だ?
「不可視だけじゃない?」
「うん。だってその横切ったのは目に見えてたもん」
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