無人の町

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(くそっ! 何なんだ!?) 取り敢えず手足さえ動かせれば何とかなる!! 必死に手足を動かそうとはするが、やはり言うことを聞かない。 「貴様らは今は動けぬ。俺がそうしているからだ」 (何!?) この男は自分の力で俺らを動けなくしていると言う。当然そんな事常人には不可能だ。しかし高速移動をやってのけたこの男ならばあるいは・・・。 「ふむ・・・。懐郷【かいきょう】を思いこの地に戻っては来たが・・・この有様だとはな」 懐郷・・・確か故郷とかって意味だったはずだ。ということはこの男はここの出身なのか!? 怪傑【かいけつ】なこの男にも古里は在り・・・か。 「・・・まぁ良い。口は動かせるだろう。その口で語ってみよ。貴様らはこの地獄の中で今、何処へ向かおうとしているのか」 「・・・お前に言ったって仕方ないだろう」 俺は思った事をそのまま口に出す。 この男に個人的事情を打ち明けた所で何かが解決する訳が無い。それよりも早くこの拘束を解いて欲しいもんだ。 (早く身動きを・・・) 心の中で今一度呟く。 「む・・・金縛りは解かぬぞ」 (な・・・何だと?) 驚きだ。 当然偶然という可能性も否定は出来ないが、もし偶然で無ければ今この男は・・・俺の心を・・・読んだ。
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