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「今に無へと帰してやる・・・」
スコープを覗いたまま、引き金に指を掛ける。その状態から、ボウガンを芋虫の先端部分に向けると、発砲した。
放たれた矢は黒い流れ星のような、幻想的で魅力的だが、同時にとてつもなく大きな力が篭っているような気がした。
「ピギュゥゥゥ!」
矢が突き刺さった芋虫は、穴から跳び上がり奇妙な鳴き声を上げて悶絶する。大きくもぞもぞと動く姿は、全身を拘束されて動けない人間を連想させた。
「ふむ、この程度で死んでは詰まらぬ」
男が倒れている芋虫に近寄りながらボウガンを真上に放ると、ボウガンは黒煙を上げながら消滅した。
素手で行くのかと思いきや、その手にはまたしても漆黒に染まっているという点では同じだが、刀が握られている。
「だが・・・。フン、所詮はこの程度という訳か・・・」
刀を構え鍔【つば】と刀身が擦れる音が轟き、死への時間制限【タイムリミット】が0になる。
「・・・ゆくぞ」
男は一歩踏み出す。
その次の瞬間には、男は俺達の視界からは消えていた。
「二宮君、あそこ!」
「んっ・・・!?」
いち早く男を見つけた梅村が芋虫の向こう側を指差した。
そこには刀を下ろしている男がいた。
更に数秒が経つ毎に芋虫の胴体が一本の線を軸にしてずれ始めている。
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