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「早くせぬか・・・」
いつまでも考えている俺に痺れを切らしたのか、少し怒ったような口調だった。しかも右手からは黒いような、紫のような、不思議な煙を上げている(だが、今後は黒煙と呼ぶ事にする)。
「わ、分かった。さ、梅村、出るぞ」
「う・・・うん・・・」
斯くして俺らは瓦礫の下から這い出た。
下半身も全て出し、立ち上がると、男は梅村の頭に手を翳【かざ】す。
その手からは黒煙が上がっている。やはりまだ信用しきってはいない。不安はあるのだ。
「最初は痛みが走るが・・・ふむ、慣れるまで辛抱する他あるまい」
男は言って、息を吸い、そして吐く。
呼吸を整えた男は、一度目を閉じた。
「・・・ゆくぞ」
合図と共に、目を見開く。その刹那、両目の角膜は紅く染まり、梅村の頭部に当てていた右手からは、大量の黒煙が絶え間無く上がる。
「うあああぁぁぁぁぁぁ・・・!!!!!!!」
梅村は声になってないような声を出し、両手で男の手を掴んで涙まで流している。相当痛いのはそれだけでも十分伝わるのだが、力の具合を目だけでも感じ取れる程、手にも力を入れている。
「・・・ふむ、ラストスパートだ」
言って、梅村の頭を鷲掴みにする。すると、男の腕全体が真っ赤に染まった。
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