死者の魂

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「あ・・・あれっ!」 俺は手を伸ばしたが、届く筈も無く、手は宙を掻くだけだった。 男の方を見ると、走る怒口露の後ろを見ながら、右手を前に突き出し何かを呟いている。 「・・・止めよっ!」 言い終えた瞬間、怒口露は口に加えていたデジカメを落とし、地面へと身を伏せた。・・・いや、伏せたと言うよりは体の力が抜けて倒れたような・・・。 「ふむ、奴の動きは止まった」 「はぁ・・・良かった・・・」 安堵で溜め息に似た息を漏らす。 そのまま怒口露へと近付いた。 しかしそれをまたしても男は止めた。 「待て、奴はまだ息絶えてはおらぬ。俺が先にゆき、カメラを奪還してこよう」 言うと男は俺に反論する暇も与えず、あの瞬間移動(厳密に言うと違うかも知れないが、一般人から見るとそう見えるので瞬間移動とする)で一瞬の内に怒口露の元へ行ってしまった。 「この糞犬め。手間を掛けさせおって」 一言言って怒口露の口元に落ちているデジカメを拾い上げる。 そして男はデジカメを、拾った右手から、左手へと移すと、さっきと同じように手を怒口露へと向けた。その行動に、何か良からぬ事をするのではと思った俺は、念の為男へと問う。 「おい・・・ちょっと待てよ。何をする気だ?」
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