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田舎道を歩く
tan tas za ja tan ……
気が向けば(くるり)
振り返る
送り火が早過ぎたのかも
午前四時の薄靄と一緒に
幽霊が鎮座ましましている
右隣り 左斜め 角の向こう
(手の平に納まる位の
哀しい火の玉)
八ミリフィルムの中で
流れている卒塔婆
荒れた土塊に隔離されたまま
石の絨毯に変わる
残燈から外された戒名は
朽ち果てるのを待つ
そして僕は何もかもが
失い続けるのを望む
木々に囲まれた公園も
色づきはじめた田圃も
小振りの洋館も
折り紙細工の駅舎も
落ち着いて見える全ての日常が
煙る水蒸気の様に
田舎道を歩く
tan tas za ja tan ……
気が向けば(くるり)
振り返る
――帰路をゆく
tan tas za ja tan ……
思い直せば(くるり)
振り返る
葉月から長月へ……
それから聞こえてくる
ひそやかな不協和音
終わりのない歌の断片
掘り返されたままの
アスファルトの向こうから
――tan tas za ja tan ……
tan tas za ja tan ……
tan tas za ja tan ……
まだ古里は残っているよ
いつかまた
暗闇の恐怖も
迷信の加護も
帰るんだろうか
……
失うものが無くなれば
何を失えばいいんだろう……?
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