16人が本棚に入れています
本棚に追加
違います。僕は彼女の感じるままの自身の愛しさを、自由であるうちに解き放ってやったのです。季節を違えた想いは(たとえそうと知らずに生まれたとしても)、一時の戯れと同じく、初めから憐れみを持たぬ心なのではないでしょうか。もし、後に沸き起こる想いがあろうと、それもまた一介の事実に過ぎないのでしょう。
薄らぐ雪に戯れし
赤き頬に刃の光
冬の百合を知りながら
朽ちた前世に
心留むる
窓を隔て、雪が降りしきります。透明な硝子一枚が僕を冬の不幸から守り続けてくれるなんて、それほどこの部屋は隔離され易いのでしょうか。けれど――。
やがて僕の娘達が血を吸いにやって来るに違いありません。母がそうしたように易々とこの頑なな心に侵入し、大切な肉の表面に彼女等の唇を突き立てるのでしょう。僕は分け与える行為を繰り返し、幾度も頂点に達しながら干からびる。これが、戯れに汚した当然の報いなのです。
最初のコメントを投稿しよう!