いつしか小鳥は霧になった

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   怒りは渦となる    叫びは嵐となる    一人の少年が    前に躍り出て    大声で訴え始める    「待って!     あの人が     何をしたの!?」 ………………………………… ………………… ……… …   小鳥はその手より飛び立った      「僕は小鳥を     飼っていて、     自由に空を     飛びたがっていた。     だから、     あの人は、     僕と一緒に……」   青い空を見ることなく まばゆい光を仰ぐことなく      「僕と一緒に、     小鳥を逃がしただけ、     それだけなんだ!」   そして小鳥は落ちてゆく    (スモッグの中を……) 静かに静かに落ちてゆく    (廃棄物のもとへ)   ………………………………… ………………………………… ………「殺せ!」    群集が微かに動き    そこには    かつて少年だった    肉片が散らばるばかり    怒りは渦となる    叫びは嵐となる    犯罪者を擁護する者は    同じ立場に立つしかなく    それは同じ罰を背負い    受ける怒りは    疑いようもなく    当然の報いであり    叫びは確かに真実であり    つまりは    彼への虐待もまた    正義の生む痛みであり    ……     「諸君! 虫けらの処刑法が決まった。残虐で非道なこの類い稀なる犯罪者は、諸君のもとに釈放されることになったのだ。この玩具をどう扱うかは、諸君等の自由である。一人ずつ殴りつけるもよし、さらしものにして皆で笑うもよし。もちろん、そのまま何もせず、ただ白い目で見ながら、無視してもよい。
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