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ただし、この虫けらは決して殺さぬよう。後の者達のために、楽しみは残しておかねばならぬのだ。そして、この正義を知らぬ虫けらに、失意と絶望を教え込んでやれ!」
……
一人の犯罪者が歩く
彼は静かに歩き続ける
……
――私は
人間の秘密を知っている
何が
本当の犯罪であり
何が
本当の正義であるのか
誰一人として
それを知らない
それが
人間の秘密なのだ
私は
それを伝えられる
皆の前に
いるだけで
……いつしか小鳥は
群集の前で霧になった
――私は
罪を犯した
あの少年を
殺してしまった……
そして犯罪者は少年の為に
初めて天を仰ぎ嘆いた
〇
小鳥はその手より飛び立った
喜びと希望と満足を
美しい羽に持って
その時確かに自由だったのだ
まばゆい光をめざし
青い空をめざして
黒い雲に砕け散った
……いつしか小鳥は
霧になった
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