稚 魚

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  硝子に身を浸し 潜り 塩素の匂いが 鼻をつき (静寂を得る為に     脳を騒音で包む) 淫靡な快感に 惑い 尾びれをゆらりと そよがせ (四角い部屋の中は     いびつな光で満ち) ……藻の群れなす水槽   あぶくを吐き      砂を喰らい   朽ちたえらに      蛆を涌かす (珪藻類はざわめく) 河床に眠る様 生まれ 真白くこの身を 塗り覆い (放たれたミジンコは     意を山師と嘲る) ……水面に映す影絵   耳鳴りを聴き      錆を見つめ   刹那の火が      灯るまで待つ (だが再び手を掛け) 奇矯な快感に ゆだね 頭をゆるりと よこたえ (そして海豚の如く     波間を渡る為に……) .
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