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  助けてくれ! 桜花が渦巻き、 落ちてくるのだ。 僅かに旋律がかった騒音と、 痴呆に似た喋くりの中で、 生きてきた君よ。 それでも、崇高な意志の下にいると信じている君よ。 その針の様な眼を、 よく開いて見てみるがいい。 それは荘厳と卑小を超えた、 真実の言葉だ。 傲慢な鼻息とくしゃみにより、 何百何千の時を耐えてきた、 重鎮共が悲鳴をあげている。 君がけばけばしいその背広を脱ぎ捨て、 両の眼球をしっかりと 中心に据えたならば、 見える筈だ。 僕の視界をさえぎるのは、 桜の濃霧。 自ら輝きを放ち、 狂った乱反射を繰り返す、 その言葉の結晶に、 僕は叩きのめされる。 荒廃した岩場に打ち捨てられた老婆の様に。   どうか助けてくれ。 そこで何をしているのだ? 君はまだ、 神に守護された 奴隷の立場じゃないか。 安全で尊大な観客席から ここを見下ろせば、 まるで雪原か樹海に見えるだろうが、それは違う。 雪の様に消えはしない。 腐って栄養となる事もない。 花びらの強烈な閃光が、 僕の胸を貫く。 僕の内臓に 細かい微粒子の穴が開き、 ぼろぼろになって、 崩れていくのだ。 だから早く! その足枷をはずし、 勇敢な先駆者達を 追走してくれ。 僕はこの小さな掌で、 言葉を追い始めている。 この節くれだった指で、 ひとすくいひとすくいと、 霧を集め、そして、 叩きのめされるのだ。   掌にすくった 僅かな言葉の鎖。 こうしてすがりついた藁が、 一体何になるのか!?
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