3/4

16人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
勿論、とてつもない光を、 その僅かは保っている。 掌をゆっくり開いて、 君にも見せてあげよう。 ほら、君はもはや サングラスなしでは、 一瞥する事すら出来ない。 けれども、こんなのは 騒音と喋くりじゃないか! 僅かに旋律がかった騒音と、 痴呆に似た喋くりの中で 生きてきたからだ! ああ……僕も、 その中で生きてきた。   そして、すくわれずに 落ちぶれた言葉。 それを知った者は、 何をしたか? ある者は、赤の革靴で踏み潰そうとした。 ある者は、冬眠する蛇の様に、その中に横たわった。 ある者は、拾ったひとつを詐欺師に売り飛ばした。 ほんの一握りの者だけが、 大きな鍋の様な手で、 存在を世界に知らしめたが、 無限に続く花びらの執念に、 やがて、……押し潰された。   君が楽園の創造を眺めている時にも、 数えきれない程の苦悩達が、 僕と同様に、必死になって花びらを掴みとろうとしている。 危なげな老婆が、 ゆっくりと動作を繰り返し、 僅かにすくっては、 丁寧に紙に貼り付け、 乾燥させ、整理して、 番号をふっていく。 だが、やがて僕も埋もれて、 息が出来なくなるだろう。 後に残るのは、 惨めな死骸だけなのだ。 それとも遙かな楽園に逃亡し、 もぐらの様に、みみずを食って生活しようか?   どうか、その前に君よ、 僕を助けてくれ。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加