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巡礼の様なあてどない作業に手を貸してくれ。 この膨大な力と 闘っている間に。 君は知ってしまったのだ、 後戻りは出来ない。 君だって、少しは 感じた事があるだろう? 恋文にしたためられた、若人の熱情。 その言葉の向こうにある言葉を知らないとは言わせない。 死の間際に呟かれた、生への執着。 その言葉の向こうにある言葉を知らないとは言わせない。 まだまだある。 怨み、妬み、快楽、 歓喜、恥辱、……。 君は既に理解している筈だ。 そのどれもが、 君を破壊するに充分な輝きを、持っているのだから。   僕には、遠い未来を 予測する事は出来ない。 偉大な隊列が ありとあらゆる地を走破し、 闇に潜む幽霊を白日の下にさらけ出す時こそが、 僕達古代人の、 崩壊の時でもあるからだ。 若々しい緑が大樹を彩り、 虫や鳥達が讃歌を奏でる、 その風景を、 偉大な隊列の死をもって、 証明するに違いない。 君もやがて巡礼の旅に 身を供する勇者となるが、 僕はそれまで耐えきれるかどうかわからない。 巨大な濃霧が身体を包み、 花びらが心を殺してゆく。 最後に僕を貫くのは、 桜そのものの、激しく不快な合唱になるだろう。   そう、呪詛の悲鳴が、 もうそこまで迫っている――。  
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