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無言で海を見つめる陽平に、ふと4年前のあの出来事が蘇った。
伊織が俺の前から記憶と姿を消したあの日。
俺は俺の我侭で、『M's』を解散させた。
記憶をなくした伊織は姿を消したと同時に家族の要望で引退を宣言。
残された俺達に事務所からは4人でのグループ継続を求められたが、俺はどうしても耐えられなかったんだ…
伊織がいないままグループを続けていく事に。
もちろん伊織に続いて、俺1人が脱退、引退という選択肢もあった。
それでも誰か1人でも欠けたら『M’s』ではないと、独断でメンバーに解散を求めた。
解散したい…
そう告げた時、メンバーはまるで言い出すのが分かってたように、うつむいて小さく頷いた。
そこからは何も手のつかない俺に変わって反対する事務所を説得してくれたり、ファンに向けて一生懸命納得してもらえるよう思いを伝えたりと、俺の我侭を通してくれたメンバー。
そしてその時に約束したんだ。
年に一度、必ず集まろうって。
それも『M's』が解散した日に、伊織の記憶が眠るこの海で。
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