268人が本棚に入れています
本棚に追加
* * * * *
どれくらい二人で海を眺めていただろう。
時より覗き見る陽平の横顔が何かに迷っているかのように時よりうつ向く。
それが何かを言い出すきっかけを探しているように見えて心がざわついた。
こんな時、何かを感じ取ってしまう位には付き合いが長い。
だから小さくため息をこぼす陽平を見てしまったときには、無邪気に突然の訪問を喜ぶだけではいられなくなっていた。
実のところ解散したての頃は、メンバーはよく顔を見せに来ていた。
伊織を失い引退した俺の事が心配だったのと、グループという糧を失った自身の身の振り方や方向性に迷ったから。
だが4年の歳月が流れて。
約束の日が来るまで、啓祐以外は滅多に顔を見せる事はなかったんだ。
特に陽平は電話やLINEはメンバー1マメだったが、仕事や舞台稽古に追いかけられる日々に姿を見せる事は皆無に等しかった。
「お前…何かあったのか?」
陽平を見ることなく海を見据えて問い掛ける。
そんな俺の心配を余所に、陽平は隣で呑気に大きな欠伸をした。
.
最初のコメントを投稿しよう!