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「まあな。お前も初対面にしてはずいぶんと態度がデカイ点についちゃあ、お互い様だがな」
「な……あなた、何様のつもりですの。このわたくしとおあいこ? いかに寝ぼけたことを言っているのか理解しておりますの?」
あ、やべえ。いい方向に場の空気をもっていって、少し調子に乗りすぎたようだ。
「わたくしは東京の本省から派遣された、上之宮玲菜!(うえのみやれいな)本省で働くわたくしに比べれば、あなたなど所詮木っ端役人に過ぎませんわ。それに、恐れ多くも皇族とイギリス貴族の血を引くこのわたくしに向かってあのような物言いをするなど不届きです!」
「ま、待て!」
「この平等な世の中において古い身分制を語るのも古臭いことでしょうからここまでにしておきます。しかしながら、それを差し引いてもあなたの野蛮で、品性の『ひ』の字も見当たらぬ言い回しには腹がたちますわ。まったく、一度小学校からやり直されてはいかがなものかと――――」
玲菜と名乗った少女のマシンガン説教は止まりそうもない。また面倒になってきたな。
店内で鳴り響く軽快なジャズのBGMとともに、くっくっくと忍び笑いが降り注いできた。
人差し指を立てて説教を続ける玲菜に気をつけながらこっそりと上を盗み見ると、なんと空中でごろりと横になりながら笑うマサの姿があった。
あいつ、俺たちの会話をコントかお笑い番組感覚でのんびり視聴していやがる。
笑い声を押し殺しているマサに気付く様子もなく、ガミガミと説教を続ける玲菜。あと何分――いや何時間こんなありさまなんだ。
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