天見愛流

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 学校は昼に終わり、俺は私服に着替えて軽く準備をした後に再び家を出た。  終業式と夏休み前の諸注意が終わった開放感と、昨日舞い込んだ神祇官としての任務への使命感をエネルギーに、俺は自転車をこぐ。  坂東市は昔交易で栄えたという港町で、今でも港にはフェリー用の長いコンクリートの桟橋や、重いコンテナを積み降ろすための大きなクレーンがあったりする。そんな景色を横目に潮風を切って走るのはなかなか気持ちがいい。  そういえば海の色って、昨日会った皇族とイギリス貴族のハーフ、玲菜の目の色に似ているな。そんな考えが頭を横切った時、右折して海沿いの道から街の中心へと続く商店街に入っていった。  その玲菜が宿泊している駅前のホテルの前で待ち合わせ、その後共同で捜査に移るのだ。ちなみにそのホテルは高級ホテル。  ホテルで待ち合わせって聞いていやらしい妄想した奴は、腹筋百回な。  そんなわけで駅前に向かっていると、今流行りのコロコロつきトランクを引っ張る少女の姿があった。遠目に見れば、これから電車で旅行にいくんだろうなといった程度の印象しか受けない。  自転車の車輪は回り続ける。  その人物の後姿が近くで目に入った時、俺は絶句し、ブレーキをかけて自転車を緊急停車させた。
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