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惚けてる暇などありませんのよ、坂東市の神祇官殿」
「うわっ、玲菜!」
突然真横から声がした。よく見ると俺が自転車を止めたこの場所こそ、玲菜の宿泊する宿のまん前だった。
「あなたの声がしたと思って外に出てみたのですけれど」
「別に惚けてなんかいねえよ。っていうか、何でそんなに機嫌悪いんだ」
玲菜は眉をきゅっとつり上げて、唇をとんがらせている。
「あなたが『服について聞かなかった』からです」
「はぁ?」
ちょっと待て。服について、聞かなかった……俺が。
どういうことだ?
あいつ、天見のちょっと不思議な格好に興味があるのか。それともあれか? 玲菜はいちいち会うたびに自分の服装を褒められないと気が済まない人物なのか。
「えっと……まず服って誰のだ? さっきの子か、お前――――」
「さっきあなたが会話していた紺色の服の人物です! なぜあなたなんかにわたくしの完璧なファッションセンスを問われなくてはならないのですか」
とりあえず玲菜の格好は完璧……じゃなくて、天見の服についてなわけだが、今度は逆に突っ込みどころが多すぎてわからんぞ。しかも、こんなにムキになられる理由も今だにわからん。
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