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ゴウという低く深い音と、バチリというかん高い音が同時に鳴り響くと同時に、俺の手がじんと痺れた。分厚い布でできた籠手をはめているとはいえ、竹刀を伝わる衝撃はハンパない。
パン、バシバシッ、パァーン!
「うわあ!」
構えを崩されて、思わず俺は悲鳴をあげる。
相手の地震のような重い踏み込みから繰り出される、雷のような鋭い太刀筋。剣先を受けてばっかりの俺は生きた心地がしない反面、本能的な生命力が俺を鼓舞してくれるから、人間はよくできているもんだ。
五月雨のような激しい攻撃をいなし続けた。頭、胴体、腕、時に剣道のルール外である脚部まで狙われる。受けるために必死に腕と手首を動かすも、いつまで続くかわからねえ。
胴着の上から防具をつけて、そこへやってくる夏の暑さと汗の湿気が気を滅入らせてくるが、今はそんな場合じゃない。目の前の相手に集中しなければ。
うだるような暑さとは真逆の、張り詰めた空気が道場を支配する。
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