マサ

5/6
32人が本棚に入れています
本棚に追加
/51ページ
 マサの正面に立って、礼をする。 「あ、ありがとうございまし――――」  その時、ガラガラと大きな音を立てて道場の扉が開いた。 「失礼いたしますわ」  煤けたこの県立高校の敷地において、最も寂しいと言っても過言でないこの剣道場。そんな場所にはまったく似合わない美人の女子が目に入る。  その子は扉にかけた手をそのまま腰にあてた。ハリウッド映画のワンシーンのように優雅な動作。ひとつひとつのポーズもばっちりきまっている。  海のように深い青色をした大きな目が、整った顔に収まっている。ロングの金髪にはゆるくパーマがかかっており、大人びた顔立ちをさらに引き立てていた。  モデル並みの背丈こそないが、手足はスラリと長く、160センチよりも少し低いくらいの身長でも、十分にスタイルのよさを感じられる。  白い生地に、黒のリボンネクタイと裾のフリルが栄えるワンピースも似合っていい感じだ。  清楚なデザインなのにあえてミニスカートなところがエロ……いや、よりかわいらしく見えるポイントだろう。 「貴様、今みだらなことを考えていたであろう」  ふいにマサが話しかけてくる。 「んなわけあるか」 「フフフ、元服(15歳くらい。昔の成人)前後の男子とはそういうものよ。案ずるな」  相変わらず彼はほのかに笑っていたが、心なしか今回の笑みはいやらしい。
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!