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マサの正面に立って、礼をする。
「あ、ありがとうございまし――――」
その時、ガラガラと大きな音を立てて道場の扉が開いた。
「失礼いたしますわ」
煤けたこの県立高校の敷地において、最も寂しいと言っても過言でないこの剣道場。そんな場所にはまったく似合わない美人の女子が目に入る。
その子は扉にかけた手をそのまま腰にあてた。ハリウッド映画のワンシーンのように優雅な動作。ひとつひとつのポーズもばっちりきまっている。
海のように深い青色をした大きな目が、整った顔に収まっている。ロングの金髪にはゆるくパーマがかかっており、大人びた顔立ちをさらに引き立てていた。
モデル並みの背丈こそないが、手足はスラリと長く、160センチよりも少し低いくらいの身長でも、十分にスタイルのよさを感じられる。
白い生地に、黒のリボンネクタイと裾のフリルが栄えるワンピースも似合っていい感じだ。
清楚なデザインなのにあえてミニスカートなところがエロ……いや、よりかわいらしく見えるポイントだろう。
「貴様、今みだらなことを考えていたであろう」
ふいにマサが話しかけてくる。
「んなわけあるか」
「フフフ、元服(15歳くらい。昔の成人)前後の男子とはそういうものよ。案ずるな」
相変わらず彼はほのかに笑っていたが、心なしか今回の笑みはいやらしい。
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