ソラニシラレヌ

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むかしむかし そのまた昔 愛は信用できるヤツだったらしい 愛はヒトの心を見せた 喜ばす喜びを知れた 愛を通した世界は美しく 愛は宗教 俺は愛の枢軸 二人のボートで漕いでまわった 世界は俺らの手の中 君も一度そう感じたはずだ しかし乗り換える時がきたんだ あなたの去った船底に穴が でも沈む船を手放せなかった 方位磁石狂った暴走ボート 折れたオール あぶく残し絶つ消息 汚れた己のどん底へと 足を引く記憶は金の延べ棒 オルゴールが回転を止めるまで 夕陽が家路を染めるまで 最後の薪が燃えるまで いくら何も飲んでももう酔えぬまで 鮮やかな色のすべてが褪せる シャッターボタン震えて押せぬ 掴んだ手のひらをすり抜けていく 砂時計の山頂はまた揺れている
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