敵わない

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「おい、起きろ」 「んが…」 私の左頬をみにょーんと引っ張る手があった。 常日頃やられているので大分伸びるようになってしまった。 痛みすらない。 まあ、痛いくらいにはやってこないが。 「起きろって。バイトは」 安眠を阻害する声。 もうちょっと寝かせて…。 「バイト今日ない…だからもうちょっと」 「でも起きろ。さすがに寝すぎ。もう昼になるぞ」 肩を揺すられ、観念して体を起こす。 肌寒さはもうなく、窓から入ってくる日差しが暖かかった。 「おはよう、にーちゃん」 「もう早くねぇから。何食べたい?」 私の挨拶を無視して淡々と聞いてくるにーちゃんにムカついて、ちょっと困らせてやりたいと思う。 「かに玉食べたい」 「却下。目玉焼き決定。さっさと着替えて降りてこいよ」 そう言い捨ててにーちゃんは部屋を出ていった。 .
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