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昼休みになり、教室の扉に手を掛けて中を覗く。
咎められる訳ではないが、何となくきまりが悪い。
そう思うのはここが自分の教室でないからだ。
情けなく思いながらもきょろきょろと見回す。
が、目的の人物がいない。
出入口の近くに座っている知り合いと目が合った。
「瀬奈は?」
丁度良いと思って尋ねると、そいつはニヤニヤしながら答えた。
「保健室じゃねぇ?ニ限の時にはいなかったと思う」
保健室?何で?
一瞬にして鳥肌が立った。
持病はないが、あいつはあまり体が丈夫でない。
「…具合悪いのか」
「知らん。もうすぐ戻ってくると思うけど」
「…あ、そう」
「ははっ、変な顔してるぞ。心配症なんだな、意外と」
からかわれてる気もしたがどう反応すればいいか分からなかった。
適当にやり過ごし、若干の気まずさを堪えてつつ、俺は保健室に向かった。
大丈夫なんだろうか。
そこまで酷くはないと思うが…。
(てか、めっちゃ恥ずかし…)
顔がほんの少しだけ熱く感じるのは、きっと気のせいじゃない。
……そもそも、あいつが悪い。
何故俺がわざわざ教室にまで出向かなければならないのか(しかもいねぇし)。
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