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「・・・・・・あれ?」
その日、進藤龍二が目覚めて最初に覚えたのは違和感であった。
まずは両腕の感触だ。どうにも柔らかいものが二つずつ両腕に挟まれるように触れている。しかも感触からして裸だ。
恐る恐る腕に絡んでいる者を起こさぬようにそれを見てみた。
「何でだ??」
自分の腕に絡みついていたのは、恋人である神戸達子とその妹神戸美琴であった。しかも、彼の予想通り真っ裸である。そして彼女達の猫が心地よさそうにしているような寝顔と来たら、龍二をキュンとさせるのに十分な威力を持っていた。
龍二は顔を天井に向け昨日のことを思い出していた。
昨日は迫り来る期末試験の勉強の為に彼女達が泊まりに来て、この家の世話役である風龍や友人佐々木安徳や後藤泰平、現代文の教師である黒淵未奈などの力を借りて夜遅くまで励んだ。その後、友人と未奈は帰宅し、神戸姉妹はこの家に寄宿(居候とも)している趙香(ちょうこう)の部屋で寝てるはずだった。
さてはこっそり忍び込んできやがったなと思いつつ、何故裸なのかはおいといて、よく耐えてたなと自分の息子を誉めたくなった。
なんとなしに時計に眼を向けて、龍二は首を傾げたくなった。
「ん?」
時計の針が指している時間は五時ちょうど。これに関しては何の問題もない。この前後に彼は目覚めて日課のロードワークや素振りをこなしているからだ。
問題はデジタル画面の日付だった。
───2007年4月8日(月)───
龍二はすぐにおかしいと思った。記憶が正しければ、昨日はこたつが大活躍する12月2日だったはずだ。それが、画面には4月8日と映されている。
4月8日と言えば、全国のほとんどの小中学校や高校の入学式ないし始業式の日である。一体どんな魔法を使えばタイムスリップできるのか知りたいくらいだ。
その件について考えようとしたが、如何せん身体がこの状態であるので、まともに考えることができるはずない。
とにかく脱出しようと試みるが、二人は龍二の腕をガッチリとつかんでいて抜け出せなかった。
無理に抜け出そうとすれば二人は不満な表情になり余計強く掴むし、挙げ句逃さんとするように足を絡めてきた。
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