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どうしようかと困っていると不意に視線を感じた。しかもあまりよくないものである。
そっとその方向に顔を向けると、ジトッとした眼線を送る銀髪の男と眼が合った。
「龍二。お主はいつからそんなたらしになったんじゃ?」
「なってねぇ。変な勘違いすんな伏龍」
「・・・・・・ホントかの?」
「本当じゃっ、いたなら分かんだろ」
ジジ臭いしゃべり方をする銀髪の男は、名を伏龍といい龍二に宿る宿龍という一種の精霊みたいなもので、彼はその中でも五本の指に入る実力の持ち主で、俗に『五大龍』と呼ばれている。
「フッ、からかうのはこれくらいにしとくか。ま、少し待っとれ」
(ちくしょう)
主人として伏龍に一言言ってやりたいが力は彼の方が断然上な為、どうも逆らうことができない。
そう言うことで、龍二は伏龍の力を借りてそこを脱出することに成功した。
「眠っ・・・・・・取り敢えず眼ぇ覚ますか」
ひとまず素振りでもして回転の鈍った頭を覚ますことにした。
龍二の部屋は二階にあるので階段で一階に降りなければならない。
「ふぁ~あ・・・・・・眠い・・・・・・・・・」
大アクビをしながら、階段を降りて近くに置いてある木刀を持って外へ行こうとして───
「ん?何だ進藤、やけに早いじゃないか?」
いるはずのない人物の声を聞いて、龍二は階段を踏み外し盛大に転げ落ちた。気づいた時には「何でだよ!」と大声でツッコミを入れていた。
「何でいんだよアンタ!」
ツッコまれた女性は困惑したように後ろ髪を掻いた。
「そりゃあたしが聞きたいさ。気づいたらこんなトコにいたんだからさ」
この際、この女性が何で和服を着ているのかは問わないでおくことにした。言わなくても分かる気がした。
彼女の名は呂布、字は奉先。ある関係で知り合った平行世界の人間である。その為、龍二達の世界の呂布とは別人であるのだ。又、この家を含め友人達の家にはその平行世界の住人達が住んでいる。
話を聞けば、神と魔族の世界からこちらに戻ってきて暫く事後処理等を手伝ってから後、呂布や鳳凰達は自分達の元の世界に帰っていった。だが、今朝目覚めていると龍二の母歩美の部屋にいたようだ。しかもちょうど起床した歩美と鉢合わせしてしまった。
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