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実は猛りの神は幼子が嫌いである。無垢で純粋な魂ほど嫌う物はないと断言できるほどに。
「おじちゃん、何でそんな姿なの?」
「これは生れてから一度も変わることがない姿だ」
「憎いって何?」
「敵意を持つという―」
こんな感じに一問一答が繰り返される中、女は阿呆かと呟きながら、ぼうっと拝殿の屋根の上から見ていた。
「―お父さん、帰りが遅いなぁ」
夕暮れ時になったことに少女は気付くと、寂しそうに呟いた。
猛りの神はその言葉を聞いて、憎しみよりも、何か同情したい気持ちに襲われる。
「―お前の父親とやらが、天海原の神主ならば―お前に用はない。さらばだ。天海原の娘よ」
猛りの神はそう言い残すと、空高く上昇する。女、その様子をじっと見ている。見ているだけで何もしようとしていない。
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