第三章 千年の眠り

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しばしの時。やがて夕日が沈み、星が点々と輝きだす。雨がぽつりと降って来る中、女はただぼうっと、火に包まれた車を見ていた。 「―最悪としか言えないか」 そう言って、救急隊員の男が、車の下敷きになった男を慎重に引きずり出す。男の身体を引きずり出した直後、車にトラックが突っ込んで来て、さらに炎上する。 雨が土砂降りになっていく中、他の救急隊員は必死に仲間と、救助者を助けようと、担架を用意して、そんな中、一人の男がプラスチック爆弾を自らの身に巻き付けて、救助隊の隊員の一人に抱き着いた。 「息子の恨みぃ!」 起爆スイッチと思われるスイッチが押される。 ああ、まさにこれも惨劇か―? 道路が爆発に耐え切れず、辺りの車も、人も、皆落ちていく様を見て、女はただ、ため息を一つ吐いただけであった。
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