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「事故により車の下敷きになった時はまだ息があったが、その後のトラックと爆弾のテロにより、跡形もなく吹き飛んだわ」
女は疲れたと言わんばかりのため息を吐くと、猛りの神の動揺をじっと見ていた。
「天海原は、我輩が殺すべき物だというのに、死んだか。人の命は、何ともたやすく消えてしまうものか、何とも脆いものか!」
赤い怒気が猛りの神を包んでいく。表情は悲しげなのに、何故、このような怒気を立ち込める事ができるのか。
「あの少女のための薬を取りにいった様だが、最早それもできない今、あの少女も死んでしまうのだろう」
女の言葉は、少女の死を暗示する。病ほど苦しく、痛むものはそうないというのに、あの少女が笑っていた事を、猛りの神は思い出した。
「リースブルーよ、天海原の少女、助けることはできまいか?」
「そりゃ無理ですな旦那。・・・私は救いの魔女だが、呪病ほど苦手なものはない」
呪い。女の言葉がさらに絶望的に響く。何とも虚しく、悲しいものか。猛りの神は寂しそうに思い耽る。
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