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しかし、悠々1時間は経っているだろうと言うのに良太は歩みを止めない。
いや、正確にはしばらく歩いては、電話をし、またしばらく歩いては、電話をするという事を繰り返している。
その結果、既に人気の全くない山道の入口近くである、三叉路の交差点に到着している。
『待ち合わせ?いや、なんか指示通り動いてる感じ?』
アキラが心の中で感じたのは、例えるなら誘拐犯に身代金引き渡しを要求され右往左往している被害者の親族。
と、次の瞬間!
良太が走り出した!
山道を山頂方向へ、明らかに全力疾走だ。
と同時に三叉路から、黒塗りのワゴンがヘッドランプをギラギラと煌めかせ、凄まじいエンジン音と共に良太の方へと飛び出していく。
「なっ!」
言葉にならない言葉がアキラの口から飛び出し、唖然とする。
が、頭より早く、体が親友の危険を察知し、押していた自転車にまたがり黒ワゴンを追いかけていく。
さっきまで、三叉路からはヘッドランプの光も、エンジン音も一切聞こえなかった。
ということは、姿を隠しながら、移動していたという事だ。
ようやく頭が体の反応に追いつき、一層ペダルを漕ぐ足に力を入れる。
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