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とある住宅街。様々な一軒家やマンションなどが立ち並ぶ、そんな所を歩く一人の人物の姿があった。
人物の名前は曽根川ひかる。肩にかかるくらいの黒髪を持つ一見性別不詳の人物。一応男である。
特徴と言えばその童顔で、服装次第で男子にも女子にも見えるという容姿。
そんな彼は、今ショートパンツにTシャツという格好で、とある場所へと向かっている。
歩いている場所の周辺は、舗装された白い路地があり、その脇には規則正しい配列で木が植えられている。空を見上げれば、ただ真っ白いドーム状の壁のようなものが、彼の視界へと入ってくる。青い空は見当たらない。
路地の上を走るのは、排気ガスなどの心配が無い、電気自動車。その電気は、恒星の光エネルギーを変換させて作られている。と学校では教えられている。
「今日もいつもと変わらないなぁ……」
ひかるは白い天井を一度見上げた後、気合を入れなおして、正面にある巨大な学校へと歩みを進めていくのだった。
平凡な授業。平凡な日々。平凡な休み時間。それらを経由し、いつも通りの平凡な放課後が訪れた。
「じゃあな。ひかる」
「うん。またね」
クラスメートと挨拶を交わし、ひかるは学園を後にした。
教室を出て、いつも通る路地を歩み、今日はちょっと違うことをしようと、いつもは立ち寄らない商店街の方へと歩みを進めていく。
そんな中、ふと顔を上に向けたひかるは、その白い天井を瞳に移し、こう呟いていた。
「……青い空って、どんな眺めなんだろう……」
今ひかるがいる場所は、移動型巨大宇宙都市『フィルマリア』
およそ30年前に地球圏を出発し、果て無き宇宙航行への旅へ出発したとされている。
一方彼は現在18歳。フィルマリアが宇宙空間へと出発した後、ひかるはこの宇宙都市で生まれ育った。
彼は生きてきて今までこの白い天井と共にすごしており、青い空というものは今まで一度も目にした事が無いのであった。
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