平凡な日々

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 ひかるが向かった先は、白い噴水が印象的な公園であった。  ベンチに腰を下ろし、ふと周りを見回せばおしゃれなお店が立ち並び、その中にあるこの公園も、それなりにしゃれた作りである。  ひかるの目の前には、白さがとても印象的な噴水。原子変換理論により、くすみが出にくい白い石を製造することに成功したなど、その理論は正に生活の諸所で役立っているのだなと、改めて実感させられる。  ひかるは自らが持っていたカバンを膝の上に乗せ、中から何かを取り出そうとしたのだが。 「まてまてまてぇぇーーー!!」  ざわめく通りの中、一際響くその声が、ひかるの耳に届いた。 「ん?」  膝の上に置いてある鞄から視線を上げると、そこには店通りの中、ちょっと奇抜な格好をした少女が、人ごみを掻き分けて何かを追っているような光景が、ひかるの視界に映し出された。  その少女の、特に髪の毛がひかるの視線をひきつけた。まるで何かの触覚のように、ぴょこんと跳ねたその髪型は、かなり印象的であった。 「こらぁぁぁ!! まてぇぇぇーーー!!」  その少女は、何を追っかけているのか知らないが、今ひかるがいる公園の中へと入ってきた。 「ん? 何だろう……?」  左肩に何かが乗った感覚を覚えたひかるは、そちらに視線を移すと、この宇宙都市では珍しいバッタがぴょこんとひかるの肩に乗っていた。 「あぁぁーー!! みつけたぁぁーー!!」 「え?」 「そこ動かないでねぇぇーー!!」  続いてその少女は、ひかるを見るや否やその目をキラキラと光らせ、猛然と彼の元に突撃してきた。 「えっ!? ちょっ……」  動こうとしたのだが時既に遅し。その奇抜な格好をした少女に突撃され、光は背中を激しくベンチの背もたれにぶつけていたのだった。
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