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古びた時計が 外に転がされていた
アンティークとはいいがたい、それでもその時計は 外観を揺るがすことなく、扉の横に置いてあった、バス停から降り立った俺の前で、店の亭主らしき男が時計の針を動かしているのを横眼で見ながら通りすぎた。
ガチャガチャと音がする。店仕舞いでもしているのだろう。
進んだ針は、流れを変えた。
歪んだ店の中では、宝石達が光りだす。
亭主が座る座布団に、老婆がチョコンと座る。
「さぁて 仕事でもしようかね。」
先程、この店の前を通りすぎたはずの男性は、古びた時計の前で佇んでいた。
噴水を見ていたはずだった。
噴水が吹き上がる瞬間、この場所へと戻ってきていたのだ。
帰ろう… そう呟いて動かした足は、真っ直ぐに、扉へと向かう。扉に手をかけ、カランカランという鈴の音。
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