~孵化~

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「不味いここで、ボランチの充が抜かれたら行くしかない!」 哲が葵からするする離れようとするが後ろから檄が飛んでくる。 「哲!スペースのケア。離すな!」 DFラインから指示が飛ぶ。それを忠実に哲は守る。 葵は、ヘルプには行かず次の動作に備える。 「チッ、葵とは距離がある。キャプテンは?」 白鳥は長瀬にべったりとマークされていて、とてもじゃないが出せない。 「苦しいな・・・」 しかし、設楽は止まらない。 恐怖心を与えるためにも退けないのだ。 すると、するするっと後ろから誰かが上がってくるのが見えた。 設楽は、彼目掛けてグラウンダーの速いパスを中へ送る。 柔らかいタッチでボールの勢いを殺すと彼はスッと前を向き。ざっと状況判断する。 「ここしか攻めるとこないかな。」 彼とは、橙椰である。橙椰もまた、最初で最後かもしれない上がりに躊躇なく飛び出してきたのだ。 橙椰がボールを持つと空気が変わる。司令塔である瀬田が後ろから慌ててプレスに向かう。 「僕の役目は二つ。最終ラインとの距離感と、司令塔との距離感の把握。そこからいくらでも考えて動ける」 橙椰は、ニャッと笑うと葵にアイコンタクトを取る。 「ん?何かするつもりなのか」
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