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『加賀!!出せ』
後半残り僅かの絶好機に加賀葵はボールを奪うと勢いよく前線のFWへとパスを送る。
ボールは、針に糸を通すように僅かな隙間を通り抜けると無人のスペースへボールは転がって行く。
それに反応した味方FWは綺麗にゴールへ流し込む。
そんなイメージだった。
しかし、葵は違った。
ボールを持つと取り敢えずおどおどする。
FWはボールを要求する。
しかしミスを恐れる余り好機を幾度となく見送る。
こんな悪循環な司令塔は最後にすることは決まっている。
後ろに下げるのだ。
慌ててボランチがロングボールを放り込むも時既に遅し、試合終了のホイッスルが鳴り響く。
葵は、膝から崩れ落ちる。
『また…またやっちまった!』
地区大会の決勝でのことだった。これで中3の廉の夏は終止符を打たれたのだった。
みんな文句も言いたいのだが別に言わない。
それもそのはず、いつものことなのだから。
天才なのに才能もすば抜けてあるのに、出来ない。
サッカープレーヤーとしていや、スポーツマンとして絶対必要な物……
それを葵は持っていない。
ただ実力は……あるのだ
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