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ボールはキーパーから最終ラインへ繋げる。最終ラインで回されても影響を与える程のプレッシャーはかけずに葉瀬サイドはいるが、長瀬にボールが入った瞬間は、FWが二人して潰しにかかる。
「これじゃあ前は向けそうない。完全に潰しに来てるな」
長瀬は潰される前に、ボールをはたく。そうさせることによってリズムが出来なくなっているのだ。
冬樹を残し、夏目達もジリジリひいてくるのだ。
ただ、こんなことは想定の範囲内。研究すれば長瀬を潰しに来ることは明白だ。なんの策もないはずがないのだ。
そして、次の瞬間桜庭から地を這うようなグラウンダーのパスがボランチではなくスペースへ放り込まれる。
「そんなとこ誰もいねぇよ。」
戒は足元に転がってくるボールを見て思うが、スッと目の前から相手選手が出てきたかと思うと柔らかいタッチで一瞬で戒から離れるようにトラップし、チラッと前を見たかと思えば、智と戒との間のスペースへフワッとチップキックでボールをあげる。
「え・・・。」
戒は一瞬のことで把握できていない。気が付けば自分の真上にボールが抜けていっているのだから。
しかし、冬樹がボールに触れる前に燈椰が大きくクリアする。
「曲者か・・・。一瞬、葵とダブったように見えたけど。神出鬼没さから言うと智か?かなり要注意だね」
燈椰はノーマークだった選手だっただけに驚きを隠せないでいた。
「17番か・・・。」
相手の17番とは、瀬田瑞季。あの大抜擢された1年生司令塔である。
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