~生死~

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「上手い…ただアイツはその上を行くぜ」 相手チームのFW亮平が言うとボールの軌道の前には既に白鳥が待っている。 「チッ…どこで読まれた」 湊が軽くイラつくものの次の瞬間、笑みへと変わる。 「待っててもボールは、来てくれへんよ」 俊足の陽介がボール横から強引にカットすれば葵にボールを送る。 葵がボールを持った途端に空気が変わる。 味方チームの期待と、相手チームの緊張。そして周りのギャラリーの歓声。 それが司令塔たる由縁。 司令塔全員が放つ独特の存在感。 葵がボールを受けた瞬間に廉がぐっと引いてくる。 ここでは廉は最も注意すべき存在。 それを見て相手センターバックが引き出される。 今の葵は、そんな一瞬を見逃さない。 センターバックが引き出されたスペースへふわっと落とすようなチップキックを蹴りこむ。 廉は次の瞬間、ぐっと止まり体重移動させればそのボールに向かい走り込む。 しかし、そんなに容易くは行かなく、簡単に二人のマーカーは廉の身体を塞ぎボールはゴールラインを割る。 「チッ!!やっぱ簡単には行かねぇか」 廉は、悔しそうな表情をするも葵に手を挙げる。 葵はそれを見て手を挙げ返す。 まだまだ試合は始まったところ。 序盤に過ぎなかった。
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